羽をください。

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「あ……い、いえ。馬のことならいいんです。この馬はもう老馬でしたから、もともとこれが最後の仕事だったんです………」 そう言う王女様の顔は少し悲しそうだった。 やべぇ。罪悪感ものすごい。俺が悪いよね。あのジャージ神が悪い気もするけど、たぶん俺が悪いんだよね、これ。 ど、どうする?『声』使っちゃう?いや、でも、そんな簡単に使っていいのか? 確か命を奪うこと以外は1時間だったよな…………… くそぅ。この美少女めが。悲しい顔ですら綺麗なんだよ、可愛いんだよ、美しいんですよ!!!! ……………使おう。うん、よし、俺決めた。これから二週間は『声』使わない。 うん、こんな感じで自分を戒めとけば大丈夫だ。うん。 「『馬の骨折が治るような声を』……………よし、もう大丈夫だ。お前、立てるだろ?」 優しく話しかける。馬はゆっくりと立ち上がった。よかった、成功した。 実は初めて使うから失敗したらどうしよう。とか思ってたなんて言わない。 王女様やら隊長さんやらお姉さんの方を見る。王女様可愛い。 簡単に言えば、かなりびっくりしてる。そりゃそうだ、治癒魔法を使ったわけでもなく、ただ言っただけなんだもの。 「え、えと……その……」 「あ、ソウイチ・スカイです。」 「あ……はい、ソウイチさん。えと……今のはなんですか…?」 ………面倒なことになりそうだ。ここは逃げよう。 「………………気にしたら負けですよ王女様。ところで、セレティ王国はどっちですか?」 「え?あ、はい。セレティ王国はここから東に行くとありますけど……」 「よっしゃ、じゃあ馬の足も治ったことだし、俺はもう行きます。さよなら王女様。またいつか。」 よし、逃げろ。全力で逃げろ。おれの身体能力ならいける。 というわけでダッシュ。 「あ、あの!またいつか会えますよね!!私、アリス・シュタインっていいます!!!!」 聞こえない聞こえない何も聞こえない。アリス・シュタインね。よし、覚えた。
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