この時を待っていた。

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「お兄ちゃん。そろそろ学校に行く時間ですよ。」 部屋の扉をノックする音と共に、蒼の澄んだ声が聞こえてくる。 そうか、もうそんな時間か。やはり嫁達と過ごしていたら時間が過ぎるのが早く感じる。幸せ。 名残惜しいが、嫁達とは学校が終わったらまた戯れることにしよう。 「ん、りょーかい。今行く。」 蒼に返事をし、部屋を出る。さらばだ、我が嫁達よ。放課後にまた会おう。 「はぁ…………」 「………だいたい予想はできるが、あえて聞こう。どうした?そんなため息吐いて。」 「だって……学校についたら、お兄ちゃんと離れ離れじゃないですか………それを考えると……はぁ……」 「休み時間の度に、俺の教室に乗り込んでくるやつが何を言う。」 今は学校へ向かう道を蒼と歩いている途中だ。ちなみにこの会話は毎朝している。毎朝。ほんとに毎朝。嫌になるくらい毎朝。 「おーい!蒼壱ー!蒼ー!」 そんなふうに、蒼と歩いていると、爽やかながらも俺にとっては不快な声が後ろから聞こえてくる。 やつだ。 隣を見ると、蒼の顔も明らかに不機嫌になっている。先程ため息を吐いた時よりもさらに。 「おーい!蒼壱ー!蒼ー!まってよー!」 「龍騎さーん!お待ちになってー!」 「龍騎ー!てめぇ!朝ぐらいゆっくり歩けよ!!」 「龍騎兄ー!まてまてー!」 「龍騎………待って………」 声が増えた。だが、だからといって、ここで本性丸出しでラリアットやドロップキックをやつにぶちかますのはまずい。俺の野望のためにも。 「はぁ…はぁ……やっと追いついたー。酷いよ、2人とも、ちょっとぐらい待ってくれてもいいのに。」 そう、この鈍感ハーレム主人公野郎。梨川龍騎に。 「ああ、悪い悪い。気付かなかったよ、龍騎。」 ラリアットやドロップキックをぶちかましたい気持ちを理性で無理矢理抑え込み、笑顔を無理矢理作り、なるべく爽やかになるように声をだす。ちなみに蒼は俺の後ろに隠れて不快感を丸出しにしている。
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