第1話

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人には、誰しも闇がある。 小さな闇か大きな闇かには差があるのだろうが。 それを巧く隠して生きられるのが普通の人間なのだろうか。 闇にあかりを灯せる人はまだいいだろう。 それが暖かく感じる人はまだいいだろう。 光を灯して闇をも包み、そう生きて行けばいい。 その光で、 闇に苦しむ人間を払い、 自分から遠ざけて生きて行けばいい。 光をくべられる人間は、自分の闇をも視ずに、生きられるだろう。 さて、闇に浸かる時を刻んでしまった『アレ』は、 光さえも痛く感じるようになってしまった。 『アレ』は光が嫌いな訳ではない。 自分の闇が、光を遠ざける事を知ってるだけ。 そして、光に近づこうとしても、 また闇に戻る事を知っているだけ。 形あるものはやがて崩れてゆくのを知っいるだけ。 そう、経験したから。 だから、光を直視出来ないのだろうと思われる。 だから、病みながらも、 闇を、薄暗さを好む。 それが自分にとっては素直な生き方だと 『アレ』はそう感じながら生きる。 光を灯す為にくべるものを、燃やす事が出来なくなる刻が、『アレ』にはある。 くべられずに、何度も何度も、その光を消してきてしまった『アレ』は 光をくべずに、崩すことさえしてしまう。 闇に、哀しみながら。 ―了―
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