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制圧した軍事施設をそのまま拝借し、その一室で今回の作戦の反省会が行われた。
「それでは、記念すべき100回目のミッション反省会をしマす」
スヴァル軍曹が会議を仕切る。
正確には元軍曹だ。彼は僕達が北極を制圧したせいで国に帰れなくなり、現地のイヌイットとヤケ酒を飲んでいた。
そこで偶然にも親方と会って意気投合。そのまま世界を救うために協力している。
僕達が未だに国際指名手配されていないのは彼のお陰だ。占拠されたことをうまく隠してくれている。
「こんな会議、もう意味なくないっスか?」
机の上で両足をのせて、「もう無理っしょ」と言う本多さんを初台さんが冷やかす。
「本多さん、怖気づいたんですか?」
「臭ぇんだよ、デブ。明日で世界が終わるってのに、二年前から何も進展してねぇじゃねぇか」
「進展していない訳じゃない」
一番古株の鈴木さんが反論する。その強気な発言とは裏腹に頭皮の方は元気がない。
「そうだな? 西君」
「はい」
今回デッドラインの西さんはメガネを光らせる。七人の作業員に対してクレーンは六台しかない。そのため残った一人はデッドラインや全体の状況を観察する役割が与えられる。
「今回、デッドラインの速度は急激に落ちました。流石は世界最大級のクレーンと言っていいでしょう。馬力は充分です」
ただ……、と西さんは言葉を濁した。その理由はここにいる全員が理解している。
それは、ワイヤーの強度だ。いくらクレーンの馬力が充分でも、それを伝えるワイヤーが切れてしまっては意味がない。
やはり、たかだか一介の土建屋に世界を救うなんて事は無理だったのだろうか。
深く深く、それこそ地球の核まで沈んだ空気の中、親方がスッと立ち上がった。
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