第5話

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 最期の日はむかつくくらい晴天だった。薄暗い紺色の空に朝焼けがぼんやりと照らす。クレーンの六本の腕には、鮮やかな緑のオーロラが薄い布を被せたように覆われている。  僕はその光景に目を奪われた。  まるで神様が無謀な挑戦者を祝福しているみたいだ。くそったれ。同じ光景を明日も見てやるよ。 「さあ、最後の挑戦の始まりだ」  僕達は三台のクレーンに乗り込んだ。 『今回使用するワイヤーは特別に倍の太さだ』  トランシーバーからは親方の声。 『耐久時間は二時間ってところだろうな』  僕は思わず笑った。  ワイヤーが切れる訳がない。何故ならば、クレーンの力が不足しているからだ。二時間というのは恐らく六台のクレーンで引っ張ったときの場合で、今回はその半分の馬力しかない。  ……でも、それでも。 「親方、生きて日本に帰りましょう」 『当たり前だ。バカ野郎。死ににいく軍人みたいなことを言うな』  絶対に諦めない。僕達は最後の最後まで、生きることを諦めない。 『始めるぞ、野郎共! 泣いても笑っても最後の挑戦だ』  僕はクレーンのエンジンをブルンと吹かし、レバーを握った。
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