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『お前らぁ、気合い入れろ! トドロキ土建最後の仕事だ!』
「親方、最後じゃないでしょう? 地球を救って、また仕事です」
僕は立ち上げり、お尻をパンパンと叩きながらトランシーバーに向かって言った。
『給料出るんでしょうね?』
『モチロンだ。お前らにやる給料、それは明日だ』
最高のお給料だ。これ以上のものは、ない。
クレーンは僕達の意思を汲み取るように総力をあげた。しかしギリギリと不審な音をたてる。何かが、おかしい。
『石橋! デッドラインはどうなっている!?』
僕はハッとして、デッドラインの方に走る。違和感を覚えたのは僕だけではなかった。
息を弾ませてデッドラインに駆け寄ると、あまりの出来事に愕然とした。
『石橋!? どうした?』
……どうして?
『新米、なんとか言え!』
ワイヤーはまだ切れていない。馬力は充分。……なのに、何で。
「……加速、している」
『何ぃ!?』
僕は動揺しながらも出来る限り詳しい説明を試みた。
「デッドラインは急激に加速しています。原因は不明。クレーンは全機稼働。ワイヤーも切れていません」
腕時計とデッドラインに引かれた赤線を見比べて、瞬時に計算する。
「最終レッドラインまで、推定あと一時間です」
最終レッドライン。デッドライン上に刻まれた赤線の最後の一本。そこが穴に落ちるとき世界が終わる。つまり、世界の終わりまであと一時間ということになる。
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