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祭は、現世と冥府に分かたれた恋人の想いをそこに見た気がした。
白紙に戻った紙が、はらはらと久遠の手の中で崩れ、季節外れの風花の如く空を舞って行く。
「黒川は術を施された絵を気にして、自らの命を削ってもう一つの絵を描いていたのだ」
久遠が淡々と告げる。
転がり落ちた手を拾い上げようと祭が腰を屈めた。
そこへ空の彼方から舞い降りて来る異形の烏。
ガア、カア。
一つの身に四本の脚、二対の翼。
ハシブトガラスとハシボソガラスの首。
ヤタイチは地面に転がる死蝋化した手を掴み取る。
頭上から声がした。見れば、木の梢に留まり笑う獅子雄。
「それはまだまだ使い道が有るからの。頂戴致しますかの」
「ジジイっ」
獅子雄が梢の上で身を翻し、烏のヤタイチが脚に掴んだ手を持って羽ばたく。
盗られると、緊迫した空気が満ちる。
その空気を裂き、不意に細く尖った金属が飛来した。
錆び付いた釘。火縄絶が手裏剣として使う物だ。
釘はヤタイチの羽の一つを撃ち抜く。
バランスを崩し、痛みに鳴くヤタイチが手を取り落とす。
「ちいいっ、死に損ないが」
「……貴方の事ですからね。転んでも只では起きないと思いまして」
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