ヘマ

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「絵に有る力は純粋に守ろうとする力です。しかし何の因果か、それが逆向きに作用しています。おそらく外法の術で絵を守ると同時に、絵の力の向きを逆にしているのではないかと。守る力を、恨み呪う力へ。そして、それは敷地内に仕掛けられている筈なのです」 それは分かる。 だが、絵からは禍々しさ以外に外法らしき気配はしない。 化けて出た緑の女からは、絡み付く欲みたいなもんが感じ取れたけどよ。どこで外法を行っているのかね。直接、緑の女に掴まれたから分かった事だが、代償がこの腕だ。安くねえの。 「この屋敷の鬼門に当たる方角を探して見ますよ。術が仕掛けて有るなら、そちらが最も可能性の高い方角ですから」 「一人は止めといた方が良いぜ。相手は植物も操るんだろう」 まあ確かに術を施しているなら、この異様な雰囲気に包まれた敷地のどこかに仕掛けの一つや二つはある筈だ。しかし、それは丘一つ分の土地。探すにしても、ちと見当が付かない。 「加護さんも、腕を異形に変えられている。呪いが一つじゃない事に、気付いているんじゃないの。相談したら」 気付いてないのは組合の四人。しかし、連中は勘の良いのが揃っている。 直ぐに気付くだろうから、言う必要もないと。 もう絵を見たんなら、須藤の眼ならば見抜いているしな。 「火縄さん。俺は調べたい事が有るから、このまま失礼するわ」 無事な右手をひらひらと振って、街灯の下、大きく広がる桜の木の影に入る。 「祭さん、貴方は何を……」 代わりの情報をくれってか。 悪いが、俺はあんたを気に入ってはいるが、まだ信用しきっちゃいないんだよ。 火縄と加護には保険として、握手と同時に術を掛けておいた。まあ自分が使う分には呼吸みたいなもんだが、他人に施すとなると完成までに時間の掛かる技だがね。 喧嘩は始まっている。使える手は使っとくさ。 「明日、またな」 影渡りの能力を使い、俺は火縄の視界から消えた。
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