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その烏は巨大化した化け烏とは違う。しかし、異形である事に変わりはなかった。
二対の翼に四本の脚。そして二つの首。それも、ハシブトガラスとハシボソガラスの首が一つずつ付いていたのだ。
「嘆かわしき命の有り様よ」
加護が、再び懐から符を取り出す。
隣に立つ火縄も、無言で錆び付いた釘を手にした。
巨大化した烏は一羽も含まれない。だが、集まり始めたその数はおびただしい。
何処にこれだけの烏が居たのかと思うほどの数が集まり、木々の梢に群がる。
どの烏も翼をはためかすだけで不気味に静かだ。
全ての烏が、青白く輝く朧な燐光を濡れ羽色の身にまとっていた。
「死人の霊が乗り移っておりますな」
果たしてその通り。強い陽射しの中でも見える朧な燐光には、時折人の顔らしきものが浮かび上がり恨めしげな表情を見せる。
「私以上の外法の使い手かも知れませんね」
火縄の肌に、汗が浮いていた。
二人は双頭の烏を睨む。
術の要はアレだろう。
空の高みから、掛けた呪いを解こうとする輩を見張っていたのだ。
ガア、カア。
高く、低く、視線の先で異形の首が鳴き交わす。
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