埋もれた家

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俺は朝になると早速甲斐家に赴いて、御当主を問い詰めてやったよ。 周りには須藤達組合の人間や、昨日大量の烏に教われた加護と火縄もいた。 こいつ等も地下に潜るんなら、多少は知っとけってんだ。 奥さんと和森は計算通り、朝食作りで席を外している。 「四郎児さん、あんた黒川を知ってたろ」 まずは、びしっと痛い所を突く。 流石の大物も顔色変えてやがんの、面白い。 「嘘は良くねえよ。肝心の所を隠すんじゃない」 「申し訳有りません。十年ほど前に高校の教師をやっている友人に頼まれまして、美術部の生徒に絵の手ほどきをしに行った事が有るのです。そこに、彼はいました」 「ああ。前の奥さんとも、その時出会ったんだろ? あの絵は彼女を守る為に描かれたそうじゃないか」 この質問は不躾だが、全部吐かせる為には脅しとして丁度良い。 後ろじゃ須藤始め、雁首揃えた術者連中が息を飲んでいる。 止めに入らないのは、絵の作者を知らないと嘘を吐いた四郎児が語る真実を聞きたいからだろう。 「はい、碧とはその時に会いました。黒川君と同じ美術部の生徒だったのです。彼は悪事を働く様な人柄ではありません。ですから知らないと嘘を」 「疑いを掛ける掛けない以前の問題だよ。嘘を吐かれちゃあ」 「申し訳有りません」 今頃、素直に嘘を認められてもな。雇う探偵がヘボなのはわざとかい。遠回りしてるんだよ。 内心は悪態吐きまくりだが、次の質問に取り掛かる。 「それともう一つ。ここは埋め立て地だな?」 「はい。父が丘を作った上に、今の屋敷を建てましたが」 わざわざ何も無い所に丘を作るなんて、どんな酔狂だよ。 「何を埋めた? 以前の屋敷以外だ」 「は?」 「何か有るんだよ。今日潜るマンホールの先だ。あんたの親父さんは何をしたんだ」 「父は一昨年亡くなりましたが。あの、屋敷が埋まっているとは?」 「家が丸ごと一軒、埋まってるんだよ。ここが建つ前の屋敷だろう。有るんなら見取り図か設計図が欲しい」 俺は怒涛の勢いでまくし立てていたよ。四郎児さんは答えるのにしどろもどろだったが、気にしちゃいられねえ。 「以前の屋敷の設計図ならば、残っているかどうか和森に確認させます」
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