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「無いんならいい。こっちで下調べした物が有る、大雑把だがな」
胸ポケットに入っている見取り図を上から叩く。
チラシの裏に書かれているから、信憑性が薄くなってしまって出す訳にはいかないがね。
何事にもハッタリは必要。
一方的に話をして聞きたい事を聞き出した後、俺は応接間で珈琲を前にチラシを見ていた。
机を挟んで向かいに須藤もいる。
「祭、昨日の今日で良くそんな物を用意出来たな」
目の前に広げた図面を睨みながら言う。
須藤の話で何かが埋まっていると知ったからな、出し惜しみはしないで見せていたさ。
加護と火縄、そしてヒーラーとか言う女子高生には、甲斐家の人達に付いてもらっている。
結界を屋敷に仕込んだと聞くが、こちらのアクションによっちゃあ、またぞろ絵の女が出て来ないとも限らない。
「須藤だって、潜るには何か手掛かりが欲しいだろ。感謝しろよ」
「ふん。いつもながら、やる事がせこい」
「抜け目がないと言え」
悪態を吐き合いながら、図面を睨む。
中央付近、大福が何か有ると告げた場所を指先で叩いてやった。
「ここらが、怪しい」
「階段、か」
「お前の眼には何が見えている」
「悪いが、今は瘴気が濃くて余り良く視えん。分かるのは表層のみだ」
眉間に皺を寄せているが、須藤も自分の弱点は良く理解している。便利な眼を持ってはいるんだが、ちょっとした術や瘴気などの幻惑に弱い。鋭敏さがかえって、どれが本物かを分からなくさせてしまうらしい。
「十時頃には、ウォーカー達が頼んだ物を準備してくる。地下の探索はそれからだ」
「ああ。鬼が出るか蛇が出るか、だな」
緑の絵の女はおとなしい。
だが屋敷の付近一帯には、二日前よりも色濃く瘴気が集まり始めていた。
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