1章 旅する二人

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一台の乗用車が、少しきついカーブを曲がっている。 セダンタイプの普通車だ。 そのカーブを曲がりきったところに段差があった。 車はそれを避けず、段差を踏んだ。 ガクンと跳ねる。 車内は大きく揺れた。 「すまない。今のは大きかったな。大丈夫か?」 運転手が、隣に座っている者に、前を向いたまま声を掛けた。 いま走っている道は、一見すると直線だが、実は緩やかに蛇行していて、気を付けないと対向車線へはみ出してしまうからだ。 といっても、すれ違う車など皆無なのだが。 「なに、いつものことだろ? 気にしないよ」 運転席のとなり、助手席に座っている人が答える。 この人は本を読んでいる。 その本から顔も上げずに、ぶっきらぼうに答えた。 「なんだい。いくら私の運転が下手だからって、そういう言い方はやめてくれないか?」 運転手が反論する。 「事実以外の何? 言ったことは事実さ」 相変わらず顔を上げない。 「文句あるなら自分で運転したらいい」 といいながらも、運転手は車を停めない。 車に乗っているのはこの二人だけ。 後部座席には荷物が溢れんばかりに詰め込まれている。 バックミラーには、リアガラスではなく、荷物が写っている。 後ろの様子はミラーからは確認できない。  
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