1章 旅する二人

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運転手の発言に、助手席の人は、本から栞を抜き出し、運転手の方に見せた。 「これを見な。俺の免許は限定だから、この車は運転できない」 見せたのは栞だ。 その栞が、運転免許だ。 この人は本の栞に運転免許を使っている。 チラチラ運転免許を見る運転手。 『小鳥遊 六木』 この人の名前だ。 でも、本当は、彼の名前は誰も知らない。 彼自身も知らないのだ。 ただ、持っている運転免許にそう書いてあるだけ。 とはいえ、保険証には『山形有友』、危険物取扱者免状には『佐藤英作』、パスポートには『原貴史』と書かれている。 奇妙なことに、免許や免許や旅券に印刷されている顔は全部彼に違いない。 役所で調べれば分かるかもしれないが、戸籍というシステムが崩壊している以上、それは難しい。 ただ、彼が彼の持っていた鞄の中で一番最初に見つけたのが、運転免許だったので、その名前を名乗っている。 (それ以外の名前は、何故か歴代総理の名前に似ている)
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