1章 旅する二人

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「そろそろ燃料が切れる。給油してくれ」 運転手が六木に指示した。 「えっと……」 六木が運転席の方に身を乗り出す。 ステアリングの間から、メーターの類いを見る。 ガソリンメーターは、針が一番下まで下がりきり、給油を催促する警告灯が付いていた。 「了解。えっと……そこの路肩に停めて」 運転手が車を六木に指示された場所に止める。 キーを回し、エンジンを止め、足元のレバーを、トランク、ガソリンの順に引く。、 「待ってて」 六木が車から降りる。 給油口を開けて、トランクからポンプを取り出した。 トランクには、ガソリンの携行缶が入るだけ積まれている。 六木は一つ缶を選び、口を開けポンプを差し込む。 反対側を給油口に入れ、ポンプのスイッチを入れた。 ……。 三分程度で給油は終わった。 「さてと、記録しようか」 運転手がノートを取り出す。 キーをONの位置まで回し、走行距離を見る。 300km。 給油量40L。 燃費は7.5km/L。 「そろそろ兵庫に入る頃かな……」 六木が呟いた。 「まだ、出発してから一週間しか経っていないのに。案外早い方かも」 運転手もつられて呟く。 「いや、遅いだろ」 六木が言った。 実は、NGワードだった。 「し、仕方ないだろ! 道が悪いから35km/H以上出せないし、大体どの道が通れるか分からないんだから、行き止まって40km位引き返したこともあるんだ。早い方だよ」 運転手が声を荒げた。 「悪い。今のは忘れてくれ」 六木は詫びたが、運転手は当分の間この事を忘れなかった。
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