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「そろそろ燃料が切れる。給油してくれ」
運転手が六木に指示した。
「えっと……」
六木が運転席の方に身を乗り出す。
ステアリングの間から、メーターの類いを見る。
ガソリンメーターは、針が一番下まで下がりきり、給油を催促する警告灯が付いていた。
「了解。えっと……そこの路肩に停めて」
運転手が車を六木に指示された場所に止める。
キーを回し、エンジンを止め、足元のレバーを、トランク、ガソリンの順に引く。、
「待ってて」
六木が車から降りる。
給油口を開けて、トランクからポンプを取り出した。
トランクには、ガソリンの携行缶が入るだけ積まれている。
六木は一つ缶を選び、口を開けポンプを差し込む。
反対側を給油口に入れ、ポンプのスイッチを入れた。
……。
三分程度で給油は終わった。
「さてと、記録しようか」
運転手がノートを取り出す。
キーをONの位置まで回し、走行距離を見る。
300km。
給油量40L。
燃費は7.5km/L。
「そろそろ兵庫に入る頃かな……」
六木が呟いた。
「まだ、出発してから一週間しか経っていないのに。案外早い方かも」
運転手もつられて呟く。
「いや、遅いだろ」
六木が言った。
実は、NGワードだった。
「し、仕方ないだろ! 道が悪いから35km/H以上出せないし、大体どの道が通れるか分からないんだから、行き止まって40km位引き返したこともあるんだ。早い方だよ」
運転手が声を荒げた。
「悪い。今のは忘れてくれ」
六木は詫びたが、運転手は当分の間この事を忘れなかった。
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