1章 旅する二人

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免許をポケットに戻し、車を発進させる。 ちゃんと合流の合図は出したが、後続車はいない。 それどころか、この三日間、対向車を一台も見ていない。 ギアを上げる。 皐はシフトチェンジが相変わらず乱暴で下手だ。 今も、車が跳ねた。 「あ、そうだ」 その振動で何かを思い出したらしく、六木が言った。 しかし、皐は前を見たまま答えない。 「おーい。聞こえてる?」 反応なし。 「おい! 月見里!」 怒鳴った。 「えっ? な、何か?」 ようやく反応した。 「すまない。別に無視していたわけではない。道が悪すぎるんだ。分かるだろ? あっ、何だよあの段差は」 そう言うと、車が減速し、次の瞬間大きく跳ねた。 「危ないな。減速していなかったら、エアバックが反応してしまうところだった。で、何かな? 話がある様子だけど」 そう言われて、六木も気付いた。 確かに道の状態は特に悪い。 ギアも2速のまま上げていないし、車自体も小刻みに震えている。 小さな段差もいくつかあるようだ。 「分かるさ。で話の内容。ガソリンの備蓄がひと缶しか残ってない」 因みに、ひと缶40L入り。 「すると、今入れたのも含め、あと600km位しか走れないということか……」 この場所から600kmだと、今は岡山と兵庫の境辺りだから、大阪の南端位なら行けるだろう。とはいえ、順調に行けたらの話だが……。 そもそも、どの道なら通れるのかも分からない。 道だけに未知の話だ。 これも全て、今から5年前に起こった『大地殻変動』が原因なのだ。
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