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空が青い。いつにも増して、太陽も祝福とばかりに神々しい光を注いでいる気がする。
もっとも、祝福だったらここで学ぶ大半の生徒にはもたらされないものだが。
「はあ……」
一枚の白い紙に目を落として落胆しているのは、肩の上で切り揃えられた栗色の髪を持つ少女、明由美(あゆみ)。ベンチに脚を揃えて座り、背筋も伸びている行儀のよさは優等生を思わせ、女の子らしい温かさは空気を和ませる力がある。
そんな彼女の顔に暗い色を落とさせたその紙は、一週間前に行われたテストの結果だった。
『魔力値――十五 不合格 操術(そうじゅつ)値――九十九/百 合格』
「はぁ……」
もう一度ため息を吐かずにはいられない。この二つの項目が九十以上でなければ合格がもらえない試験で、明由美のこの数字は才能のなさをいつも眼前に突きつけるものだからだ。
「おーい明由美! どうだった?」
悲嘆にくれた背中に、明るい声がかけられた。その声を聞いただけで、明由美の落ち込んだ心は少し温かくなる。
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