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「――お遊びは、ここまで」
「…え…?」
まだキスの余韻が冷めやらぬ中、勝ち誇った田原さんの瞳が自分の目に映り、
「本当にすると思った?」
ボーとしていた頭に大きな岩がぶつかったような衝撃を受けた。
「あーあ、口紅とれちゃったね」
唇の端からはみ出たと思われる口紅を指の腹で拭き取り、ペロリと舌なめずりして。
私から一歩身を引き、何事もなかったようにバッグを拾って差し出す。
「ごめんね、インモラルラブはまた今度。そろそろ行かなきゃ」
その気にさせて、おあずけ食らったみたいな形になって。
心の中でかなり笑ってるに違いない。
悔しすぎる。
「そーですね、行きましょうか」
正直、バッグをひったくって一人でガンガン先に進みたい衝動に駆られたけど、敢えて平静を保つよう努めた。
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