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「お前、まだいたのか」
うんざりした表情で戻ってきた花宮の手には、新しい本が握られていた。
またもや、黒子の好きな本だ。
「…花宮さんって、そういうジャンルの本が好きなんですか?」
いまだに嗜好が同じことが信じられない黒子は花宮に問いかけた。
「まぁ、よく読む。この作者の描写の仕方が好きっつーか、文章の運びがなんとも…」
そこで花宮は開いていた口をつぐみ、黒子を睨んだ。
「何でお前にそんなこと言わなきゃなんねぇんだよ。ウゼェ」
「気になったもので。まさか花宮さんと好きなジャンルが被るとは思いませんでした。どうして貴方なんでしょうか…残念です」
「それはこっちの台詞だバァカ」
花宮も黒子と嗜好が同じと知り驚いた表情をしたが、すぐに憎たらしい顔に戻った。
だが口元の笑みからは今までとは違い、嘲りのものではない純粋な嬉しさが見えたような気がする。
同じ本が好きな人がいて素直に喜んでいるようだ。
案外、花宮は可愛い性格をしていると黒子は思った。
花宮は全てが憎たらしい嫌な奴ではなく、ちゃんと可愛げがある人間なのだと。
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