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黒子はしばらく花宮の隣で読書をした。
時折会話をしながら、憎まれ口を放ちながら。
ギスギスとした剣呑な雰囲気ではない、本が好きな者同士の柔らかで心地よい雰囲気に包まれた空間が構築されていた。
「おい黒子」
おもむろに花宮が口を開いた。
「なんですか」
「お前の評価を改めるわ」
黒子は本を読むのを止め、花宮の顔を見た。
対する花宮は、黒子には見向きもせずに本を読んでいたけれど。
「お前がぶっ潰す対象なのは変わらねぇけど、普段のお前なら…」
花宮はそこで口をつぐみ、何やら考え込んでしまった。
言いたいことを表す言葉が見つからないのだろう。
少なくとも花宮の中では印象が良くなったのだと黒子は思い、笑みがこぼれた。
「僕も、花宮さんへの評価を改めましたよ」
黒子は花宮の本を取り上げて机に置いた。
読んでいたページがわかるように開いて置いたが、おそらく花宮には必要のないことだろう。
きっと、花宮はページを覚えているから。
取り上げられた花宮は怪訝な顔をするて、呆れたように黒子を見た。
「ふはっ、なんだよその手」
黒子は花宮に手を差し伸べていた。
本を置いたのは、きちんと自分を見てほしかったから。
「友達としてなら、仲良く出来そうな気がするんです。花宮さんがよかったら握手でも、と」
花宮は黒子の手をまじまじと凝視した。
そこから視線を動かさずにしていると、花宮はため息をついた。
「仕方ねぇな。いいぜ、してやっても」
黒子の手を取った花宮は満更でもない様子だ。
あまのじゃくな花宮を、黒子は微笑んで見つめた。
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