第7話 【今夜、俺のマンションに来い】

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月曜日の朝。 【関係者以外は立ち入り禁止】と書かれた硝子扉を抜け、院内事務職関係者が使用している更衣室に入る。 足を踏み入れた途端に、幅20㎝程のロッカーが部屋の突当りまで並ぶその部屋は、ロッカーが向かい合う通路もなんとか人がすれ違えるくらいの狭い間隔で、出勤時間の更衣室の状況は、学生時代のプールの授業を思い出す。 私のロッカーは、壁側の奥から二番目にある。 会話に夢中になって、下着が丸見えになっているのも気にせずストッキングを履くおばちゃんの横を、「おはようございます」と遠慮がちに言って、危険なものを避ける様に通り過ぎる。 いつものように垢抜けない制服を身に纏い、いつものように天然色の長い髪をきゅっと後ろで束ね、べっ甲柄のバレッタで留める。 鏡を覗き込み、メイクの最終チェック。 柔らかなピンクとブラウン色で仕上げたアイメイクに、控えめだけど艶のある、オレンジ系のリップ。 ――いつもより、ちょっと気合い入れすぎたかな…。 明らかに女子力アップを意識した自分の顔を見つめ、思わずはにかんだ笑みを浮かべる。 いつもと同じ朝だけど、私の心はいつもと違う朝… この鏡に映しだされる今の私は、金曜日の夕方に映しだされた私とは違う。 一昨日よりもドキドキする… 昨日よりもドキドキする… 病棟で先生に会ったら、どんな顔をすればいいの?―――そう考える度、顔が熱くなって、耳まで熱くなって、胸はキュンと甘くて切ない音色を奏でる。
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