ハジマリの夜――prologue

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あたしばっかり欲しいみたいで、うっかりキスしたく、なるじゃない。 「そんなにイイ?」 汗ばんだ額と視線がぶつかる。 あたしは潤みきった目で精一杯、挑発を装う。 どうしようもなく疼く体は、誤魔化し切れないほど小さな爆発を繰り返していて。 あとほんの少しで、どうにかなると思う。 でも。 目が合っただけで飛びそうだと、そう感じるのに、越えられない。 ブツブツになった理性を繋ぐみたいに、彼の呼吸は、崖っぷちであたしを引き留めるんだ。 「リン」 愛しそうに、悲しそうに、いつもと違う声色であたしの名前を呼ぶから。 「欲しがれよ」 苦しそうに、悔しそうに、いつもの飄々とした口調で、信じられないくらい熱い息を吐き出すから。 「……欲しがったら、あたしを満足させてくれんの?」 「どこが不満か言ってみ?」 は、と二人で低く軽く、嘲るように笑った。 「だってタネがオンナ抱いてんの、想像できない」 「しなくていい」 「見たことないし」 「見せねぇし」 「なんで」 「なんでも」 「……あ、分かった、あれでしょ。夢中すぎて目とか血走っちゃうんでしょ」 「当たり」 「ウケる。タネってヤりながら人殺しそうな顔してんの?」 「そ。だから見んな」
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