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日曜日の昼が来た。
いよいよ、これから拓海が名古屋に出発する。
泣きたい気持ちや不安を必死に抑え、繋いだ手を握りしめる杏香。
それに応える様に拓海も繋いだ手に力を込める。
きっと、大丈夫…
信じているから…。
ベルが鳴る。
拓「じゃあ、行ってきます」
杏「…行ってらっしゃい」
泣き出しそうな杏香を、
『ギューッ』
と力の限り強く抱きしめ、耳元でゆっくりと呟く。
拓「……愛してる。」
杏「…私も。私も…愛してる…」
ゆっくりと腕を放し、杏香の頬を両手で包み、優しく優しくキスをする。
名残惜しそうに唇を放すと、新幹線に乗り込む。
抑えきれない涙は、杏香の頬を伝い始め、それを見た拓海は、握った拳に力を入れ唇を噛んだ。
ドアが閉まり、静かに静かに動き出す。
拓海の姿が見えなくなると、杏香は堪らずしゃがみこみ、泣き崩れた。
もう二度と逢えない訳じゃない。
その気になればすぐに逢える。
なのに…
何故か本当の別れの様な哀しみに襲われる2人だった。
-つづく-
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