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「ほら、終わり。いい加減そういうの卒業しろよ」
センセーは綺麗に包帯を巻いたばかりの肩の傷口を、ぺちんと叩く。
「って」
「その程度の痛みが嫌なら、喧嘩なんかよせばいい」
……分かってねえな、この人は。
怪我こさえてくんのは、ただの口実、だろうが。
さっさと着ろ、と促されて、しぶしぶシャツに袖を通す。
肌蹴た身体を隠していく白布、ひとつずつボタンを留めていく指先にじっと視線を感じた、気がして。
動きが緩慢になる。
「……何」
何、見てんの?
そーゆーのやめて。
期待、すんだろーが。
「いや、別に? いい腹筋してんなーと。スポーツでもやればいいのに」
ほら、そうやって。
気ぃ持たせといて、すぐ落とす。
週2、3回ここに来れる頻度で怪我できるスポーツって、何よ。
「そんなに嫌なの、俺がしょっちゅうここに来ること」
迷惑なのかよ。
――気付いて、いるから?
うーん、と眉を寄せて考え込んだのは、体のいい言い訳を探しているからなのか。
そうだよな、気持ち悪ぃって思ってんだろ。
「確かに、不快だね」
……うわ、直球。
体のいいどころじゃねえ。
もうちっとオブラートに包めや。
凹むわ、マジで。
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