第1話

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目眩がする。 長い指が腹をなぞって、声が漏れそうになって唇を噛んだ。 「不快なのは」 す、と上に伸びてきた指が、唇を割った。 ビクリと身体が反応したのが、たまらなく恥ずかしくて。 目を、逸らす。 「噛まないで。血が出る」 下唇をいたわるように、親指の腹が掠めていく。 「……っ」 クラクラする。 『不快なのは』 言葉の続きを待っているはずなのに。 指先の動きひとつに、翻弄される。 やめて。 ヤメテ。 期待する。 流される。 触らないで。 言葉にしてしまいたくなるから。 鎖骨を伝った手は、怪我したばかりの肩口へ。 それから、まだ痣の残る腹筋の溝をなぞる。 最後に、もうかさぶたすらなくなった、胸の切り傷の跡を辿った。 「不快なのは、この綺麗な身体が、こんな風に傷つくこと」 ――『キレイナ カラダ』 どくん、と。 血液が沸騰した。 興奮した。 たった、その一言だけで。 ヤメテ。 期待する。
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