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目眩がする。
長い指が腹をなぞって、声が漏れそうになって唇を噛んだ。
「不快なのは」
す、と上に伸びてきた指が、唇を割った。
ビクリと身体が反応したのが、たまらなく恥ずかしくて。
目を、逸らす。
「噛まないで。血が出る」
下唇をいたわるように、親指の腹が掠めていく。
「……っ」
クラクラする。
『不快なのは』
言葉の続きを待っているはずなのに。
指先の動きひとつに、翻弄される。
やめて。
ヤメテ。
期待する。
流される。
触らないで。
言葉にしてしまいたくなるから。
鎖骨を伝った手は、怪我したばかりの肩口へ。
それから、まだ痣の残る腹筋の溝をなぞる。
最後に、もうかさぶたすらなくなった、胸の切り傷の跡を辿った。
「不快なのは、この綺麗な身体が、こんな風に傷つくこと」
――『キレイナ カラダ』
どくん、と。
血液が沸騰した。
興奮した。
たった、その一言だけで。
ヤメテ。
期待する。
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