第1話

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「へえ、モテんだ、センセー」 「1回診ただけの患者さんとかもね」 しれっと眼鏡を直しながら言う、表情を変えもせずに。 「馬っ鹿じゃねえの、いい大人がそんなんに浮かれて」 「浮かれているのは僕じゃない、チョコレートを持ってくる方だ」 ……何が、言いたいの。 俺別に、アンタにチョコレートあげようとか浮かれてないんだけど。 「チョコと一緒に患者も食うのか、無害そうな顔して鬼畜だなセンセー」 「残念ながら、チョコは嫌いでね」 「へえ。……否定しねえんだ、『患者』の方は」 「それは――」 ギシ、と、腰かけていた診察台が鳴る。 センセーが立ち上がって、近づいて、俺のケツの横に片手を置いたからだ。 再び衣服を整えていた手を、掴まれる。 「相手による、かな」 至近距離で微笑まれて。 耳に息が、かかった。 全身が――、泡立つ。 目眩、再び。 「熱でもある? 赤いけど」 「……――ッ!!」 額に当てた手で そのまま、押されて 診察台に倒されて 半泣きで、固まった。 ナニコレ、何コレ、なにこれ。 どーしたいの、センセー。image=480596019.jpg
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