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「へえ、モテんだ、センセー」
「1回診ただけの患者さんとかもね」
しれっと眼鏡を直しながら言う、表情を変えもせずに。
「馬っ鹿じゃねえの、いい大人がそんなんに浮かれて」
「浮かれているのは僕じゃない、チョコレートを持ってくる方だ」
……何が、言いたいの。
俺別に、アンタにチョコレートあげようとか浮かれてないんだけど。
「チョコと一緒に患者も食うのか、無害そうな顔して鬼畜だなセンセー」
「残念ながら、チョコは嫌いでね」
「へえ。……否定しねえんだ、『患者』の方は」
「それは――」
ギシ、と、腰かけていた診察台が鳴る。
センセーが立ち上がって、近づいて、俺のケツの横に片手を置いたからだ。
再び衣服を整えていた手を、掴まれる。
「相手による、かな」
至近距離で微笑まれて。
耳に息が、かかった。
全身が――、泡立つ。
目眩、再び。
「熱でもある? 赤いけど」
「……――ッ!!」
額に当てた手で
そのまま、押されて
診察台に倒されて
半泣きで、固まった。
ナニコレ、何コレ、なにこれ。
どーしたいの、センセー。
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