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小学生の頃、足が早くスポーツ万能だった子や、中学生の頃、ユーモアたっぷりのクラスの人気者だった子や、高校生の頃、頭脳明晰、いつもテストは一番の生徒会長だった子。
その時に学校一モテていたと言っても過言ではない男子にさえ、一切恋心なんて芽生えなかった。
一応、異性に好意を向けられることは何度かあったのだけど、周りの女子生徒に触発されたり、自分だけ取り残されるのが嫌だとか、そういう理由でとりあえず彼氏を作る!なんてことは一度も思ったことは無かったし、興味も無い人と恋人になるつもりなんて無かった。
そんな時は、こう言って断ってきた。
「私、沖田総司が好きだから」
「え……沖田、総司って、新選組の?」
「そういうことだから、ごめんね!」
ポカンとした表情の男にペコリと頭を下げ、早々とその場を後にした。
賑やかなキャンパス内をきびきびと歩き、待ち合わせ場所の二階にある食堂へと入っていくと、大きな窓際の席へ座っていた友人の香奈恵の隣に腰掛けた。
「可哀想に」と、窓の外を見つめる彼女の視線を辿ると、とぼとぼと歩く先程私に告白してきた男子学生を見つけた。
「あの子、他の女の子達が格好良いって言ってた子だ」
「へ~」
あっけらかんと弁当を広げ、卵焼きを口に放り込む私を見て、香奈恵は呆れ顔で笑った。
「小学生の頃から変わんないねあんたは」
「あはは、母親みたいな口ぶりだね」
「なんだっていいんだけどさ、大学入ってもうすぐ一年半だよ、そろそろ彼氏作りなよ」
香奈恵が私に彼氏を作れだなんて、初めて言った気がする。今まで、私が告白されて振る度に、彼女は相手に同情しながらも「好きにしなよ」と、私のことを理解してくれていたのに。
少し驚いて香奈恵を見ると、彼女は真剣な表情で続けた。
「今までは、本当に好きな人が見つかるまで待てばいいと思ってたんだけど、全っ然その日はやってこないし、いつまでも沖田総司沖田総司って、ちょっと心配になってさー。ある程度歳とって、この先変な男に騙されないためにも、今のうちに男を知っておくべきだと思うんだよね」
さらに驚いて香奈恵を見つめると、彼女は「難題かなこれは」と困ってみせた。
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