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「真野くん、新選組好きなの?」
本のタイトル見られていないだろうかと、ドキドキしながらそう問いかけると、彼はこの間のように照れたような表情を見せた。
「一瀬さん、沖田総司が好きって言ってたから、ちょっと勉強してみようかなって。一瀬さんが好きなものとか、知りたいし、一緒に話もしたいし」
目が合って、全力で逸らしてしまった。ああ、今挙動不審者だ私。
「でも、難しいね。年表とか見ても、いっぱいありすぎて訳わからなくなってきた」
「私だって、別に詳しくは無いよ」
新選組が好き、というか、私は沖田総司が好きなんだもの。あの時、あの場所で見た、彼が。
「一瀬さん?」
「え、ああなんでもない。ありがとう真野くん」
礼を言うと、一瞬きょとんとした彼は、嬉しそうに笑った。
それからは、真野くんからたまに電話がかかってくるようになり、趣味の話や、よく見るテレビ番組とか、お互いの好きなものなどがわかってきて、最初のぎくしゃくした雰囲気はすっかり無くなってきた。
「時代ものだけど、漫画が原作だからそんな堅苦しい感じじゃないみたいで面白そうでさ~」
食堂で、真野くん、真野くんの友達の宮原くん、香奈恵の四人で丸テーブルを囲い、昼食を共にしているとき、宮原くんは最近公開したらしい映画について話出した。昔から剣だの刀だの、チャンバラごっこのように振り回しているのが格好良いと思っていたので、それは実に興味がある。
「観たいかも」
「じゃあ皆で行くか!?」
わくわくしたように目を輝かせる宮原くんは、私達の返答を聞く前に、いつにする?と、自分の空いている日を教えてきた。
十月上旬、快晴。気持ちの良い風が吹く爽やかな日曜日、午後一時前。集合場所の駅前に行くと、真野くんが、爽やかな水色のシャツを着て立っていた。
「早いね」
「いやさっき来たとこ」
真野くんはにこっと笑うと、宮原は遅刻魔だから、待たせることになったらごめんねと、謝ってきた。この子はなんて気遣いの出来る子だ、なんて勝手に感心していると、ふと私の服に目をやった。
「ワンピースも似合うね」
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