赤い薔薇

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穏やかな空間の中、薔薇の香りと紅茶の香りが部屋にふわりと漂っている。 私達は指輪を両手で包んだまま 幸せ過ぎて、私の涙はもう止まらなくて… 部屋に響くのは、私が啜り泣く音 「文香…」 愛しい人が、優しく私の名を呼ぶ。それだけで、私の胸はきゅんと軋む。 将さんは、私の手からそっと自分の手を離し、私の頬を撫で、涙を拭う。 そして、額に、頬に、瞼にキスをして、最後に指輪を持つ私の手にキスをした。 将さんの一つ一つの仕種が、まるで、映画のワンシーンのようで、見惚れてしまう。 5年前の時も、怯える私に、こんな風に優しいキスをたくさんしてくれたな… そう思い出して、また胸がきゅんとした。 ・
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