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「三田さんは、変な噂で仕事も振り回されて、本当に気の毒。結婚まで考えている人がいるのに。
秋吉さん、言ってることわかるわよね?」
「……はい」
秋吉さんは小さな声で頷き、俯いた。
「あの…本当に婚約を…」
「はい」
「……そう、ですか」
今まで睨むように私を見ていた秋吉さんの態度は、信じられないほど一変した。
私に怖ず怖ずと尋ねてきた姿に、あの挑発的な態度は微塵も感じられない。
「そういえば、正式にはまだってことは、親御さんとの挨拶はまだってこと?」
「はい。だから、まだ会社のほうに報告は…」
「そうね。皆もこのことはまだ他言無用よ。いいわね?
じゃ、プライベートな話はこれで終わり!引き継ぎしましょ!」
東さんはサバサバとその場を仕切り、皆、仕事モードに突入した。
秋吉さんも反発することなく、今までのあの苦労は何だったんだろうと、力が抜けるほどスムーズだった。
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