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「文ちゃん…ともかく、今日は見合いをしてくれ。
後からきちんと話を聞くから…どうか、お願いだ」
「お義父さん…」
いつも私に気を遣う義父が、こんなに必死に私にお願いすることなんて、今までにない。
「ねぇ、ふー…」
不意に横山君が私の耳元で囁き、私の身体がビクッと跳ね上がる。
「俺の親父のご機嫌を損ねないほうがいいよ。お前の彼氏に影響を及ぼすから」
「え?どうして…」
将さんが関係あるの?
横山君は両親に聞こえないように、私に囁き続ける。
「会えばわかるさ。ほら、彼氏に何かあったら困るだろ?」
横山君は怪しく笑い、私の背中を押し、扉へと誘う。
「さ、行きましょうか」
横山君の気になる発言が
義父の必死なお願いが
母の威圧的な眼差しが
私をがんじがらめにして…
私の足は、気持ちとは裏腹に、横山君の両親がいる部屋へとぎこちなく動き出した。
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