651人が本棚に入れています
本棚に追加
「文ちゃん、違うんだ…」
「お義父さん!何が言いたいの?
あたし、結婚を約束した人がいるから、お見合いなんか出来ない!無理だよ!」
私は必死に訴えるけれど、義父はテーブルに肘をつき、両手でこめかみを押さえる。
「文ちゃん…ごめん…」
ごめんって、どういう意味?
手で顔を覆い隠し、苦しげに呟く義父に、私は疑問を抱かずにはいられない。
「…だから無駄なのよ。あんたは拒否出来ないんだから」
「拒否できないって…?」
目を細めて私を一瞥する母に、恐る恐る尋ねる。
もう…嫌な予感でいっぱいだ。
私の嫌な予感は、嫌というほど当たる。きっと聞かされることは、決して喜ばしいことじゃない。
義父がゆっくりと顔を上げる。
「文ちゃん…すまない。
お見合いは断れない」
・
最初のコメントを投稿しよう!