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「お義父さん…なん、で…?」
「文ちゃん!お願いだ!
このまま見合いをしてくれ!」
私に縋るように義父が懇願する。
「嫌だよ!離して!
あたし、今、お見合いのこと聞いたばかりなのよ?
それなのに、そのまま即お見合いだなんて、有り得ない!!」
私は切羽詰まった声で抵抗する。
「俺がそう頼んだんだ」
「横山君!」
「逃げられたら堪らないからね」
悪びれもせず、横山君は言った。
「酷い!卑怯だよ、横山君!!
私には婚約者がいるって知ってて…!」
「文香!!」
自分の名前を叫ばれ、私の身体が一瞬で凍り付く。
私の名前を呼んだのは、一番、私に近くて、一番、私から遠い人。
小さな頃から、彼女が私の名前を呼ぶのは、決まって私を罵る時だけ…
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