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「ふー、大丈夫か?」
「やッ!」
私の肩に置いた横山の手に嫌悪感を感じ、咄嗟に振りほどく。
「さわら、ないで……ハァー…」
吐きそう…
私は眉をしかめて、もう一度、大きく息を吐き、横山君を睨む。
「……そんなんで歩けるのかよ」
振りほどかれた手をぐっと握り、横山君は低い声で話す。
「ちょっと疲れただけ。
自分で歩けるから…あたしには触らないで」
今、横山君にもう一度触られたら、吐き気を我慢出来そうにない。
そのくらい、横山君に対しての怒りの感情が、私の中でどろどろに渦巻いている。
「…じゃあ、中庭に行くぞ」
私は横山君の言葉に無言で頷き、彼の後について行く。
そして、フレンチレストランを出て中庭までの道のり、私達は黙ったまま、どちらとも声を発することはなかった。
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