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繋がれた手錠を恨めしげに見ながら、がっくり肩を落としていると
「はい。あーん」
「へ?」
間抜けな声を発した私の口許に差し出されたスプーン。
将さんは満面の笑みで、スープ1さじを持って、私を見つめている。
「あーん」
「いや…あの…この状態でも、自分で食べるくらいは…」
ジャラジャラと手錠されたままの手で、スプーンを貰おうとすると、将さんはすっと手を引いて、私の手を避ける。
「あ、あの…?」
「はい。あーーん」
三度目の『あーん』
有無を言わせないような、将さんの真っ黒なニコニコ笑顔。
こんな甘々なこっ恥ずかしいことをしろと……?
例え、誰も見ている人がいなくても、『あーん』なんて、バカップルの代名詞みたいな行為は、かなり恥ずかしい。
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