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最後の難関 #3
「…ま…こと…が……?」
囁くように父の名を呟いた母に、私はコクンと1回頷いた。
「私は…私達は……なんて、馬鹿だったんだ!!」
義父ももう隠すことなく、ハラハラと涙を流している。
「誠が、そんなことを…!どうして…どうして…!!」
泣きながら、母は同じ言葉をうわ言のように繰り返す。
過去の父の言葉が、現在の母と義父に更なる後悔をもたらしてしまったかもしれない。
けれど、言わずにはいられなかった。 父の本心は、きっと、私に遺された言葉だったと思うから…
『パパがいなくなっても、皆が笑ってくれていたら、パパも空の彼方から笑っているよ』
父は、母のことも、義父のことも、憎んでなんかいなかった。
絶望なんてしていなかった。
例え、自分が死んでいなくなっても、皆の幸せを願って…
父の言葉に、一点の曇りもなかった。あの綺麗な空のように。
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