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恋するあまのじゃく #2
アタシは合鍵を手の中でクルクルと手遊びしながら、ぼんやりと藤沢さんが靴を履き終わるのを眺めていた。
そして、彼が玄関のドアノブに手をかける。
「いってらっ…」
「なあ…」
「え?はい?」
見送りの挨拶を遮られ、アタシは拍子抜けした表情を晒す。
でも、ドアノブに手をかけたまま、ゆっくり振り向いた藤沢さんの見つめる眼差しが、余りにも真剣で鋭く、思いがけずドキッとした。その直後
「……一人で泣くなよ」
「――ッ!な、泣きませんよ!」
更に物凄い衝撃で、心臓を撃ち抜かれた。
な、何、言ってんの!?この男は!!
動揺して顔が一気に熱くなる。
「そ。なら、行ってくるわ」
藤沢さんはケラケラと笑って、真っ赤な顔のアタシを置いて、出て行った。
今更、何、アタシに二枚目ぶってんのよ!
アタシは手の中の合鍵を握りしめたまま、忌々しい思いで、藤沢さんが出ていった玄関を見つめたままだった。
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