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「ありがとう。文香」
満面の笑みでお礼を言う将さんに、私も自然と顔が綻ぶ。さっきまでの姿なきライバル達への苛立ちが、すっと静まってゆく。
よかった…喜んでくれて…
気持ちがほんわかと浮上し始めたと同時に、将さんがテーブルにドンと肘から下を置いた。
そして、その置いた手をズササササーと一気にスライドさせ、貰ったチョコをテーブル下の紙袋へと入れ込んだ。
うわぁ…ぐちゃぐちゃだよ…
あまりに雑な扱いに私は戸惑う。紙袋にはラッピングの残骸とチョコがごちゃ混ぜ。
…ちょっと複雑な心境だなぁ
微妙な面持ちで山盛り状態の紙袋を見つめる。
「今から食べるのに邪魔だからね」
しかし、将さんはそんなこと気に留めることもなく、いそいそと食器棚へと行き、フォークとお皿を出して、チーズケーキの前にちょこんと座った。
そして、箱からケーキを取り出して皿に乗せ、皿ごと持ってくるりと回し見てから目の前に置き、マジマジと眺めていた。
その顔は期待に満ちて、目がキラキラしている。
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