空の彼方へ *Side:M* #2

1/3
前へ
/35ページ
次へ

空の彼方へ *Side:M* #2

そして、僕自身が辛かった。 総一が結衣子に未練があるのを解っていて、僕は結衣子と結婚した。だから、もともと恋人同士だった二人が再び惹かれあっても、仕方のないことだと思っている。 しかし、二人の未来を肌で感じながら死んでゆくのは、さすがに耐えられそうにない。 結衣子を愛しているから、彼女の幸せを願う反面、自分のものであってほしいという願望も消えないのだ。 僕たち三人は、ずっと、こんなジレンマをそれぞれ抱え続けてきた。 けれど、それも僕の死によって終わりを迎える。 ホスピスの転院が正式に決まった直後、総一と結衣子、それぞれに別れを告げた。 突き放すように冷たく。 僕との縁を完全に断ち切るために。 そして、誰にも別れを告げず、僕はホスピスへと転院した。 ********************* 「平井さん!平井さん!先生…!」 看護師が僕の容体の急変に気づき、僕の名を懸命に呼ぶ。 しかし、その声はだんだんと遠のいてゆく ・
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

607人が本棚に入れています
本棚に追加