591人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふ、ふみかぁ……ううっ」
突然の涙声に、ギョッと驚いた。
「お、お母さん!?」
母が涙をぽろぽろ流し、大号泣している。
え?今、泣くようなことあった!?
泣いている理由が解らず、焦る。
「おいおい。結衣子、皆、びっくりしてるよ」
「だって…ふみッ…花嫁ッ……」
「ああ…文香ちゃんの花嫁姿に感動したんですね」
たどたどしい母の代弁を高嶺先生してくれ、母はうんうんと首を振る。
「花嫁…見れなっ…思ってた…から」
結婚式を国内で上げる予定ではなかったから、母もそう思っていたのだろう。
嬉しそうに微笑んで、私の手をぎゅっと握り
「文香、綺麗…」
と小さな声で囁いた。
『綺麗』
たった一言。けれど、私には特別な言葉。
母から、その言葉を貰えるなんて一生ないって思っていた。
・
最初のコメントを投稿しよう!