Morning #3

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「ふ、ふみかぁ……ううっ」 突然の涙声に、ギョッと驚いた。 「お、お母さん!?」 母が涙をぽろぽろ流し、大号泣している。 え?今、泣くようなことあった!? 泣いている理由が解らず、焦る。 「おいおい。結衣子、皆、びっくりしてるよ」 「だって…ふみッ…花嫁ッ……」 「ああ…文香ちゃんの花嫁姿に感動したんですね」 たどたどしい母の代弁を高嶺先生してくれ、母はうんうんと首を振る。 「花嫁…見れなっ…思ってた…から」 結婚式を国内で上げる予定ではなかったから、母もそう思っていたのだろう。 嬉しそうに微笑んで、私の手をぎゅっと握り 「文香、綺麗…」 と小さな声で囁いた。 『綺麗』 たった一言。けれど、私には特別な言葉。 母から、その言葉を貰えるなんて一生ないって思っていた。 ・
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