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六月二十九日。
今年の梅雨はあまり雨も降らず、晴れの日が続いていた。
特に今日は快晴!とまでいかないまでも比較的和やかな天気の昼下がりだった。
そんな中浮かない顔で歩く女子高生の姿が一人。
服装は学校の制服と思しきもの。
紺のプリーツスカートに半袖のブラウス、それにとある学校の校章の入ったサマーセーター。
お嬢様学校として有名な私立桜乃女子高等学校の制服だと一目でわかる。
そんなお嬢様学校の生徒とは思えないほどの口から漏れる深いため息と重い足取りで彼女は駅前の繁華街に向かっていた。
「はぁ・・・今月はピンチなのに。よりにもよって繁華街だなんて・・・」
彼女は学費こそ両親に払って貰っているものの、自分の生活費は自分で稼ぐ、言うなれば苦学生なのだった。
「おぅ!来たな結城由衣ちゃん!」
そんな沈んだ彼女の背中に掛けられた明るい声。
「この平山琉華様の誘いを断る事はないと思っていたけど、来なかったらどうしようかなぁってちょっと不安だったよ!」
仁王立ちで腰に手を当てている女の子――平山琉華はにこやかに笑っていた。
ちなみにこの琉華とゆう少女、桜乃女子校の二年生である。と同時に、全寮制を取っている桜乃女子校でのルームメイト。つまり先輩でありルームメイトなのだ。
入学間もない由衣のために親睦を深めようと今回の繁華街散策(兼買い物)を企画したのも彼女である。
「はぁ・・・でも琉華さん、買い物するって言ったって・・・」
「ノーだよ!ノー!その琉華さんってゆうのやめて!もっとこう親しみを込めて琉華って呼んで!はいっ、せーの!」
「る、琉・・・華?」
「いいねぇ!それでこそあたしの後輩ちゃんだよ!あたしも親しみを込めて由衣って呼ぶからよろしく!」
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