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時間も夕方になり一通りのお店を見て回った二人は帰路についていた。
「見るだけっていっても結構疲れるねぇ。かなり回ったんじゃない?」
「そうですねぇ。琉華なんか途中の洋菓子店の前でよだれ垂らしてるんだもん、笑っちゃった」
「なっ!?あれはよだれじゃなくて心の汗だよ!」
琉華が意味不明な弁解をしていると、隣を歩いていたはずの由衣の姿がない。
「あれ?由衣・・・?」
辺りを見回すと、由衣は通り過ぎたお店の前で立ち止まっていた。
そこは小さなアクセサリーショップだった。
「何か気になる物でもあったの?」
屈んでいる由衣の後ろからひょこっと頭を覗かせた琉華は、由衣が見惚れている物を見る。
それは細いシルバーチェーンに小さな銀の指輪のモチーフをあしらった可愛らしいネックレスだった。「ははぁん?由衣ちゃんこれにご執心なわけですな?」
「あ、いえ・・・可愛いなぁと思って・・・。」
「欲しいんでしょ?」
「そんな・・・!」
図星を突かれて慌てる由衣を尻目に、ふ~んと言いながら琉華は値段を確かめてみる。
三万四千八百円。
「・・・苦学生にはきつい値段ね。まぁ諦めるしかないわね」
「はい・・・」
「私が出世したら買ってあげるわよ」
「本当ですか?」
どうだかねと、二人笑い合いながら寮への帰路へついた。
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