1.飛びます飛びます

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 4月上旬、所謂春。  太陽の日差しが木漏れ日となって降り注ぐ中、使い古した鞄を持って歩く。周りではまだ幼さの残る新入生であろう生徒が型崩れのないキレイな制服を着て歩いている。 「ふっ……あぁ」  そんな中で俺はあくびを1つ。そしてグッと背伸びをしつつ、歩を進める。  今日から新学期。俺こと桐生大護(きりゅうだいご)は高校3年になり、受験やらなにやらで忙しくなる年だ。でもまぁ、成績は学年でも上の中程度だし、問題ないだろう。  木漏れ日の道を抜けて、そのまま直進。少ししたら左に曲がって5分程歩いたところに俺の通う学校がある。  長くなってきた黒髪を気にしながら校門を潜り、そのまま3階の俺のクラスに向かう。教室に入り、クラスメイトと軽く挨拶をして席に着く。 「よっ!随分とのんびり登校してきたな。生徒会長さん」 「よっ……って、普通に名前で呼べって言ってるだろ、冬馬」  呼ばれた方を見ると、茶色い髪の毛が目に入った。その髪の下には人懐っこそうな笑顔を浮かべた、俺より頭半分ほど背の高い男子生徒、赤星冬馬(あかほしとうま)がいる。こいつは俺の親友で、小学校からずっと一緒に過ごしてきた。 「とゆうか、またお前と同じクラスかよ。ホントにやめてほしいよな」 「待ってくれ大護。普通にその一言は傷付く」  冬馬を弄ってるところでチャイムが鳴る。いつも通りの日課を終えた俺達は、始業式の行われる体育館に向かった。
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