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主人が空いてるスツールにどっかと腰をかけると隣に座っているメルヴェが話しはじめた。
「私はアニミズの生まれで兄は5年前故郷を出ました。冒険者になるといって…」
「そこでこっちにいた頃はいろいろと世話してやったんだ」
「こちらにいるときはいくらかの仕送りもありました。半年前兄から赤の台地へ行くとの手紙があった直後に故郷の村はパンテオンの襲撃を受け、僅かな者を残して村は壊滅しました」
メルヴェの黒い瞳に涙が浮かぶ。
タティアスもかつての自分の境遇を思い出した。何者かにふるさとを襲われ、父達を亡くしたこと。
「兄には故郷に戻ってきて欲しいと思ってます。村は人手がわずかで建て直しもままなりません」
「彼女は兄さんとは兄妹2人きりらしいんだ。何とか力になってくれんか?」
「しかし…道のりは安全ではないんですよ…」
ベイリーの言うことはもっともだ。
「あんたの言うのも分かるが彼女はクスコの準司祭だ。戦えんが長い旅の役にたつだろう」
クスコ神は月の女神で、運命と医術を司っている。
その神に仕える彼女もそれなりの医術や癒し手としての力は持っているのだろう。
「分かった…他の仲間も今晩連れてくるから皆で顔合わせをしよう」
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