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「……ミサヲちゃん」
「な、に……」
「名前」
「え」
「……名前、訊いてもいい」
乱れる息の中、ミサヲちゃんは顔を赤くしたまま黙り込む。
やっぱり、まだ駄目かな。
「なんで……?」
「……今からちゃんと抱くのに、源氏名とか切なくない。ちゃんと呼んでやりたいし」
泳ぐ指は、充分すぎるくらいなことを知っている。
あとは塞ぐだけなんだけど──それまでに優しく追い詰めたい。何度でも。
ミサヲちゃんはハフ……と息を漏らしながら目を閉じた。
「……め、い」
「うん?」
「芽衣……」
「芽衣ちゃん?」
ミサヲちゃん──いや、芽衣ちゃんは俺が名前を呼んだ瞬間、またジワッと涙を浮かべる。
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