始まりの終わり。

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   そこまで考えて、だ。  操とじゃれ合うのはやめにしなければ、と正しい理性が働く。  これまでは“これはこれ、それはそれ”精神で何もかもを適当にその場で片付けてきた。  でも、今はそれではすべての後味が悪くなる気がする。  どこで何をしていようが俺の身体は俺のもので、そして芽衣にあげたもんでもあって。  芽衣がいない場所で何をしたって関係ない、とはもう思えない。  不思議なもんだ。  今まで誰も、俺にそんな倫理観を与えてはくれなかったのに。  ……8年間、胸を焦がした操ですら。  自分の中の昏い淵をふと覗き込んでしまいそうになった瞬間、資料室の壁に無造作に貼られたぼろっちい切り抜きが目に入る。 “あなたの中の最良のものを  世に与え続けなさい。  けり返されるかも知れません。  気にすることなく、  最良のものを与え続けなさい” “あなたの正直さと誠実さとが、  あなたを傷付けるでしょう。  気にすることなく、  正直で誠実であり続けなさい” .
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