124人が本棚に入れています
本棚に追加
ここにいるのは、操だけど。
もう一度、彼女を振り返った。
縋るような瞳の操とぶつかって、心が揺れる。
ほんの一瞬前まで、この瞳を蔑むのが正しい対処だと思ってたんだけど。
──本当に操には、行き場がないのか。
結婚している身で不貞を働くほど、俺のことが好きなのか。
俺なしでは、いられないのか。
「操」
そのままゆっくりと振り返り、カーディガンを掴む手首をパシンと掴む。
操の瞳に、期待が過ぎった。
「木島」
見つめる俺の視線をどう解釈したのか、酩酊するように操の瞳がどろりと欲望に溶ける。
それを受けて掬い取ってやるのは簡単なことだけど。
.
最初のコメントを投稿しよう!