124人が本棚に入れています
本棚に追加
「馬鹿にしないで!」
「馬鹿にしてんのは、そっちだろ。ただの欲求不満なら、充分だろうが。会う度何回いかせてやってると思ってんの」
「──……ッ!!」
シュ、と平手が飛んで来そうになって、その手首も掴んで止める。
どうも女は人を殴るのが下手らしい。
今の、止めなかったら頬じゃなくて耳に当たってた。
そのときのキインとした耳鳴りと眩暈のする衝撃を想像して、ホッと息をつく。
まあ、急所を確実に狙ってくる女ってのも、怖いけど。
「……言えないんだろ?」
「それは……ッ」
一瞬で感情が極限まで高ぶったのか、操は肩で息をし始める。
俺は溜め息をひとつついてから操の身体を抱き寄せた。
「操」
「……木島、なんでいきなり、そんな」
「とりあえず、落ち着けよ。息、詰まるぞ」
ポンポンと操の背中を撫でながら、彼女の興奮が少しでも和らぐようにしてやる。
高ぶらせたのは俺だ。
その責任はある。
「あのな、操。3年も辛抱してて、なんで旦那に言わない?」
「……木島には……」
「関係ない、とは言わせない。俺とお前、やることやっちまってるんだから。お前がどうしてもって言うから、この状況なんだ」
「……」
.
最初のコメントを投稿しよう!