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操は溜め息ともつかない小さな呻きを漏らすと、縋るように俺の背中に手を回した。
その感じで、とりあえず好きだとかいう言葉が嘘じゃないことは判る。
俺はもう、応えられやしないけど。
「共犯者、って言っただろ。知られたくない秘密なら、守ってやる」
「木島……」
操の呻きは嗚咽に変わる。
何がそんなに悲しいんだ、なんて野暮なことは訊かない。
大人になればなるほど、全ての理由が曖昧になる。
恋も、仕事も、生き方も、その何もかもが。
思考の放棄とは思わないが、人間っていうのは新鮮さを失くしていくとともに習慣という恐ろしい怪物に支配されていくんだと思う。
昨日やったから今日もやる。
1年前もそうだったから今年もやる。
10年前に決めたから、今も続ける。
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