始まりの終わり。

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   できる限り周りに馴染んで、そこにふさわしい自分であろうとする。  ときどきそこから外れるようなこともするが、それだってどこかしら周りの期待通りに振る舞っている感があって。  自分はここにちゃんといるのに、ときどきどうしようもなく空っぽな事実にぶつかる。  昨日までの俺なら、こうして泣き縋る操を見て──めちゃくちゃにするか、放置するしか選べなかったと思う。  でも、こいつはもうひとりの俺みたいなところがある。  俺が女の身体で生まれていたら、こんな女になっていたんじゃないだろうかと思う。  操が俺に助けを求めたのも、そういうことだったんじゃないだろうか。  ──相手に対する執着は、絶対俺の方が強いと思うけど。  操の手を掴み、そのまま彼女と同じ高さまでしゃがみ込んだ。 「操」  促すように彼女の肩に手をかけ、そのまま軽く自分の方に引っ張る。  操はされるがまま、俺に抱き付いた。  俺の肩にしがみついて泣き続ける操の頭を撫でて、抱きしめる。  まるで、迷子の子どもにそうするみたいな気持ちだった。 .
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