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悲しいことに、操を抱けば抱くほど俺の中の純情は死んでいくし、心の泉も枯れていく一方だ。
芽衣とは、違う。
芽衣の顔を見ていると嬉しくなる。芽衣を抱けば満たされる。
またすぐに欲しくなるけど、カラカラに餓えて相手を傷付けてまで欲しいだなんて思わない。
与えて、与えられて……これが男と女の本当の関係なんだって、柄にもなく思うんだ。
操は、いい女だ。
今でも友達として必要だと思ってる。
俺の世界にいてくれないと困る人間だとも思ってる。
──だから、終わりにしないといけないんだ。
出口の見つからない、不毛なだけのこんな関係は。
「よいしょ……はい、木島」
「ん」
出版社の資料室で、昨年度までの広告資料がファイリングされたボックスを操から受け取り、溜め息をつく。
別に会議室で待っていればよかったんだが、操の「脚立がグラつくから支えて欲しい」というそれらしい言葉に乗っかってこの狭い資料室にやってきた。
そうして、操のケツのテロを食らったわけだ。
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